通常、文字の読み書きを学ぶのは小学校入学後からですね。
「文字は小学校に入ってから学べば十分」と考えていらっしゃる方も、「小学校前にはひらがなの読み書きができるようにしておいた方がいいのでは?」と考えていらっしゃる方もいることでしょう。
いずれにしても、文字は言葉を表現するためのツールですので、文字を学ぶ前にたくさんの言葉に接して親しんでおくことが大切です。
今回は、3歳までにたくさんの言葉に接して、楽しく文字が読めるようになる遊び方をご紹介します。
日常の遊びの中に取り入れてみてください。
1.絵本は文字に親しめる最強のツール(0歳~)
小学校で文字を学ぶのは当たり前のことのように感じるかもしれませんが、実はものすごい量の段階を経た基礎の上に成り立っているのです。
お子さんは、赤ちゃん期の「アー」「ウー」のような音を出すクーイングから始まって、唇や舌を使って複雑な音が出せるようになる喃語、1語文、2語文、助詞などを伴った文章へと、どんどん言葉を獲得していきます。
この間、たくさんの言葉を聞いて、自分でも音を出してみたりします。そして、それぞれの言葉がどんな状況で使われているのか、自分が発した言葉に対して反応がどのように返ってくるのかなどを学ぶことによって、徐々に正しい発音や言葉を身につけていきます。
文字も同じように、読み書きができるようになるまでにたくさんの段階を踏んでいきます。トドラー期は、やがて文字の読み書きを身につけるための準備期間です。文字に接し、親しんでおきたいですね。
けれど、文字は言葉があって初めて意味を持つものです。「文字」だけを意識して教えようとせず、たくさんの言葉に接しながら文字にも自然に触れられる環境づくりを意識しましょう。
そのツールとして最強なのは、やはり絵本です。
0歳から絵本の読み聞かせをしましょう。初めは聴覚からたくさんの言葉を学んでいます。
視覚がしっかりしてくると、絵本を見て絵や文字に自然に親しんでいくことができます。
1歳頃からは動物や乗り物、食べ物の図鑑を見て楽しむのもいいですね。語彙が自然に蓄積されていきます。この頃は、本をタンタンとたたいたり、声を出したりするようになるので、お子さんが興味を持っているのがわかるようになります。
2歳前後は「ことばの爆発期」と言われることがあります。
お子さんの発話が急に増えることを指していますが、これはそれまでに接して蓄積してきたたくさんの言葉が発話として表れているのです。蓄積した言葉が増えているということは、ひそかに文字も豊富に獲得していることにつながっています。いろいろな絵本を読んで、文字に親しみながら、たくさんの言葉を蓄積していきましょう。
3歳頃には「これなぁに?」と興味を持って、自分から絵本の文字を指さして聞いてくるようになるかもしれませんね。その時には、「これは“ぞうさん”だよ」、とか「“はな”だよ」、と文字を指し示して教えてあげましょう。
お子さんは絵本の中の文字に興味を示し始める頃、それが「形」として存在しているだけではなく、言葉と関係のあるものだと気づき始めます。
初めは意味のない絵も言葉や文字も、繰り返し触れることで、絵が表していることや、文字が言葉と関係がありそうなことにだんだん気づくのです。
また、興味がでて楽しくなってくると、絵本をどんどん読みたくなってきます。
このお子さんの「気づき」と「意欲」を引き出してあげるのは、何においてもとても大事なことです。
絵本は、そうした「気づき」や「意欲」を楽しく自然に引き出してあげられる最適なツールでもあります。お気に入りの絵本をたくさん読んであげましょう。
お子さんの年齢や興味に合ったものを選ぶと、言葉や文字にも一層興味を示してくれますよ。
2.文字パズル・カルタで遊びましょう(2歳~)
2歳頃になると、指先も少しずつ器用になってきて物をつまめるようになります。また、文字が言葉を表しているものであることにも気づき始める頃です。
この頃になったら、文字の形のパズルや、絵と文字が書いてあるパズル・カルタで遊んでみましょう。
3歳頃までは、形や絵と一緒に文字に触れながら、見たことのある文字を蓄積していくことが大切です。
繰り返し遊んでいるうちに文字の形に親しみ、指さして「これは “あ”」とか「これは “い”」というように文字の区別ができるようになるかもしれませんね。ただこれは、ひらがな表の一文字一文字を読めるということを目指すのではなく、「この形が“あ”だな」、「この形が“い”だな」、と形に親しむことを念頭に置いて楽しみましょう。
お子さんにとっては、「文字」も初めは「形」のうちの一つです。
乳幼児期のお子さんは右脳の発達が優れているので、形などをイメージして記憶するのが得意なのです。「この形と同じのはどれかな?」とか「この“あ”と同じのはどれかな?」と同じもの探しの遊びをするといいですね。お気に入りの文字は自然に覚えてしまいます。
そしてうまく見つけられたり、パズルにはめられたりしたら「よく見つけられたね」「上手にはめられたね」とたくさんほめてあげましょう。意欲を引き出すチャンスです。
カルタで遊ぶ場合も同様です。
例えば一方にあひるの絵、反対側に「あひる」と文字が書いてある場合には、絵の方を表にして「あひる はどれかな?」と絵と言葉を結び付ける遊びをしましょう。
「これ!」とカルタを取れたら、裏返して「あひる だね」と文字を見せてあげましょう。繰り返すうちに文字を表にして取れるようになるかもしれませんね。
あるいは同じカルタを2組用意して、文字の「あひる」を見せて「同じものを探して」と同じもの探しをする遊びもいいですね。
でも「これが “あ”、これが “ひ”、これが “る”」というように、一文字一文字を読ませる必要はありません。3歳までの時期は、全体の形でこれが「あひる」だと見分けがつくようになれば十分です。
楽しく遊んで、「できた!」「もっと遊びたい!」という気持ちを大切にしてあげましょう。
3.お絵描きも大事(1歳半~)
文字は「読む」だけではなく「書く」ことも必要になってきます。
そして「文字を書く」までにも、いくつかの段階を経た準備が必要になってきます。
「書く」というのは、手や指を動かす運動機能の要素を持っているからです。
手指の運動機能を高めるには、お絵描きもとても良い方法です。
まずはクレヨンを握ってそれを動かすということをやってみましょう。
1歳半頃には、自分の意志で握るという動作ができるようになってきます。この頃になったらクレヨンを握って紙に打ちつけて、点々を描いたり、いわゆる「なぐりがき」ができるようになります。
自分の動かしたものが形となって表れてくることは、お子さんにとって大きな発見と喜びです。
クレヨンは「ベビーコロール」がおすすめです。
握る部分が球のような形で、細い物を握る動作がまだうまくできないお子さんでも、簡単に握って持つことができます。丈夫にできているので、紙に打ちつけても折れにくいです。また表面がツルツルしていて手も汚れにくくなっています。
2歳頃になると、手指の巧緻性も高まってきて、線や丸などがだんだん描けるようになってきます。いろいろな色で、紙に自由に描いて遊びましょう。
通常の細長いクレヨンで描く場合は、棒を握るような持ち方で構いません。自分の目と手指が協同して描ける体験をたくさんさせてあげてください。
3歳頃になると、見ているものを真似して描いたり、自分の中のイメージを形として表したりできるようになってきます。
「アンパンマンを描いて!」とリクエストが出てくるようになるのもこの頃です。パパ・ママも一緒にお絵描きをして楽しみましょう。
このようにお絵描きで遊んでいると、手指の発達が促され、自分の意志にそった線が少しずつ書けるようになってきます。また、お絵描きはお子さんの想像力や創造力を刺激する楽しい遊びですので、お子さんの書く意欲を高めてくれます。
今後、「自分が読める字をパパ・ママに書いて見せたい!」という気持ちが出てきやすくなります。
気づいたら文字が読めるようになる!楽しい文字遊び
文字を学ぶ前の準備段階として、3歳頃までにできる文字に親しむ遊び方をいくつかご紹介してきました。
日常の遊びの中でたくさんの言葉や文字に触れると、自然に文字に親しむことができます。楽しく遊ぶ中で、わくわくした気持ち、できたという達成感、もっとやりたいという気持ちを大切にしてあげましょう。その気持ちがお子さんの吸収力をどんどん高めて、気づいたら文字が読めるようになっていますよ。