「レストランごっこ」「ヒーローごっこ」「お花屋さんごっこ」等、子ども時代に色んなごっこ遊びに夢中になった経験がおありの方も多いのではないでしょうか。
子どもにとって、遊ぶことが学ぶことです。遊びには様々なものがありますが、ごっこ遊びは、特に乳幼児期に経験してほしい大切なことがギュッと詰まった、重要な遊びです。
本記事では、ごっこ遊びの効果や、年齢別の楽しみ方、援助のポイント等について、分かりやすくご紹介します。是非参考にして頂けると嬉しいです。
ごっこ遊びとは
ごっこ遊びとは、「八百屋さんごっこ」「美容院ごっこ」のように、設定した役になりきったり、ものを別の何かに見立てたりして展開する遊びです。
1歳頃から活発になる再現遊び(お出かけや食事等、日常生活を再現する遊び)から始まり、発達が進むにつれ、世話遊びや、見立て遊び、つもり遊び、ごっこ遊びへと発展していきます。
こうした遊びができるのは、脳が延滞模倣という機能を獲得し、認知的発達が進んだ証です。
ごっこ遊びの効果
子どもは、おうちごっこ等の遊びを通して、親など身近な大人の真似をし、生活体験の再現を繰り返しながら、想像力を身に付け、思考力の土台を育んでいきます。
思考には、様々な発想を豊かに広げる拡散的思考と、1つの答えを導き出す収束的思考とがあります。
乳幼児期の見立て・つもり・ごっこ遊びで育つのは、拡散的思考です。
空想の世界を自分の実体験と結びつけて、現実と空想を行き来しながら遊んだり、積み木やブロック等を様々なものに見立てて遊んだりする経験を積み重ねていくことで、豊かな発想力、知識と知識を結びつける力、応用力、仮説を立てる(予測する)力、人の気持ちを想像する力(共感力)、比較・分類する力、見通しを持って計画を立てる力等、その後の人生に必要となる大切な力を育むことに繋がります。
ごっこ遊びの年齢別の楽しみ方
子どもの手が届く場所に、必要なものを用意しておきましょう。用意したいものとしては、人形、バンダナ、布、手提げ袋、洗面器、ままごと、おんぶ紐、エプロン、皿、コップ、スプーン等が挙げられます。
以下、年齢別の楽しみ方と援助のポイントをご紹介します。
再現遊びの初期は、子ども自身の朝目覚めてから夜眠るまでの1日の生活を、まずは大人が再現してみせ、遊び方のモデルを示しましょう。
バンダナ(ハンカチ)、お手玉
- 「お弁当を持ってお出かけしよう」と、バンダナにお手玉を包み、手に下げる。「行ってきます」と出発。
- お弁当を食べる。バンダナを開いて「いただきます」、おにぎり(お手玉)を美味しそうに食べて見せる。「ごちそうさま」とお手玉をバンダナに包み、帰る。
- 家に戻り、お風呂へ。衣服を脱ぎ、たたむ、を身振りでして見せ、お風呂上がりも、バンダナで体を拭いて、パジャマを着る身振りを演じる。
- バンダナを布団に見立てて「おやすみなさい」と寝る。
- ものを介して他者と気持ちを交流する楽しさを学ぶ時期です。第二者(身近な大人)とのあいだで、第三者(おもちゃ、別の大人、友だち等)を共有できる場を作っていきましょう。
- 食事のシーンでは、単純に作って食べるで終わるのではなく、作るシーンを具体的に丁寧に演じましょう。出来上がった料理を食べた後も、食器や鍋を洗ったり、拭いて棚に収納するところまでをつなげて演じると、子どもの遊びも繋がっていきます。再現遊びがより豊かに展開できるようになっていくよう、援助しましょう。
素材やおもちゃを何かに見立てて遊ぶことが大好きになります。周りの大人がやっていることを真似したり、自分が経験したことの中から、あるものにイメージを重ねて遊ぶことができるよう、環境を整えましょう。
さまざまな色のお手玉
赤いお手玉をイチゴケーキ、黄色いお手玉をバナナケーキ、緑のお手玉をメロンケーキ等に見立て、ケーキ屋さんごっこをする。
- 子どもの発想やイメージが広がる玩具を用意しましょう。特定の目的にしか使えないものより、様々なものに見立てられるのが望ましいです。例えば、チェーンリングやお手玉などは、パスタやラーメンになったり、おにぎり、お饅頭、果物等、様々な食材に見立てて遊ぶことができます。
- 遊びの中で多様な言葉のやりとりを楽しめるようにしましょう。「こんにちは」「ありがとうございます」「綺麗な赤色ですね」「これを1つください」といったやり取りを通して、日常生活に必要な言葉に触れたり、ものの性質や数量的な感覚を養うことにも繋がるよう、援助していきましょう。
- 大人が主体となって遊びを進めすぎると、子ども自身が自分で発想を広げていくことが難しくなります。子どもが想像力を働かせながら遊びを展開していくことができるよう、子どもの遊びを支え、広げる役目を果たしましょう。
- 子どもが遊びの世界に没頭している時に「何しているの?」と通常の大人目線で話しかけると、子どもが一気に現実の世界に引き戻されてしまいます。例えば、子どもがままごとを始めた際には、「何だかいい匂いがするなぁ。お腹が空いたなぁ。」というように、子どもと同じ遊びの世界の住人となって参加しましょう。
1〜2歳の頃の見立て・つもり遊びを発展させて、「病院ごっこ」「電車ごっこ」といった、日常の生活で体験したことや自分のイメージを表現しながら、ごっこ遊びができるようになります。
適切な環境があれば、自発的に遊びを広げていくことができるので、大人の役目は、環境を整え、見守ることです。必要な場所やものを用意したり、必要な役を演じたりしながら、子どもの遊びがより豊かに展開していくことができるよう、支えていきましょう。
- ひとり遊び、並行遊びの段階から、徐々に集団で遊ぶ経験が大切な時期になってきます。同年代の友だち複数人と遊べる環境にあることが望ましいです。お住まいの環境によって様々な事情があると思いますが、保育園や幼稚園、近所の公園や遊び場等での出会いを大切にできるといいですね。
- 遊びの中で、役を決めたり、役を交代したりしながら、自分の思いを主張するだけではなく、他者の気持ちや願いにも気づき、譲ったり、貸し借りをしたり、といった経験ができるようにしましょう。
- 遊びの中で、友だちやきょうだいと思いや意見がぶつかることもあるでしょう。けんかは極力避けてほしいと大人は思いがちですが、こうしたぶつかり合いは、この時期のお子さまにとって、とても重要な学びとなります。ぶつかり合いを経験しながら、相手の思いに気づくことができるようになり、自分の感情をコントロールしたり、折り合いをつけたり、他者を受容する社会性が育っていきます。頭ごなしに叱ったり、ごめんなさいを強要するのではなく、両者の思いを受け止めながら、仲立ちをしましょう。
トドラー期の注意点
子どもの遊び方は、発達に応じて変化していきます。1〜2歳児はひとり遊び、並行遊びをする時期です。1人で遊びながらじっくりと自分の世界を作り上げていきます。自分自身の内側に豊かな世界を築くことで、想像力、思考力の土台を持つことができ、思いやりの心が育ち、その後、友だちと仲良く遊ぶことができる姿へと、繋がっていきます。
そのため、再現遊びや見立て・つもり・ごっこ遊びも大切ですが、1人で集中して遊んでいる際には、無理に誘ったりせずそっと見守りましょう。
子どもが自発的に遊びを始めた際は、子どもの世界の住人となって参加し、遊びを支え、広げていく援助をしながら一緒に楽しみましょう。
ごっこ遊びで生きる力を育む
大人は、例えば「読み書きができる」「足し算引き算ができる」といった知識を早く多く得ることに注目しがちです。
ですが、これからの時代を生き抜くためには、ただ知識を持っているだけではなく、知識を活用する「思考力」を育む必要があります。
再現遊び、見立て・つもり・ごっこ遊びを通して、この思考力の土台を育むことができます。子どもが集中して遊び込めるよう、十分な時間と環境を整え、是非親子で楽しんでくださいね。