世界的にも有名なレッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育。
どちらもイタリアで発祥した教育法ですが、どのような点が相違しているのでしょうか。
この記事では、レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育の違いを5つ解説しました。
それぞれの教育法の違いが気になる方は、ぜひご覧ください。
こんな親子におすすめ!
- レッジョ・エミリア教育について知りたい方
- モンテッソーリ教育について知りたい方
- 各教育の違いを知りたい方
レッジョ・エミリア教育とは?
レッジョ・エミリア教育は、1960年代・イタリア発祥の教育理念です。
教育家のローリス・マラグッツィ氏が発案したことをきっかけに、北イタリアの「レッジョ・エミリアと呼ばれる町」で広がりました。
レッジョ・エミリアの理念を基に、アプローチ(手法)として、世界中の国々に少しずつ取り入れられるようになります。
レッジョ・エミリア アプローチは、子どものことを既に力を持っている1人の市民と捉え、主体性を重んじた教育手法を実践しました。
カリキュラム(教育課程)は事前に決まっておらず、子どもの興味や関心を基に、1つのことに集団で取り組む活動(プロジェクト)を行います。
また、レッジョ・エミリア アプローチは、「専門の教師と一緒に行うアート活動」や「写真で記録を残す、ドキュメンテーション」が特徴的です。
ヨーロッパ諸国を中心とした国際機関・OECD(経済協力開発機構)が、幼児教育における成功例の1つとしてレッジョ・エミリア教育を掲げたことにより、世界中に大きな影響を及ぼしました。
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育は、1907年頃・イギリスにて「マリアモンテッソーリ」という人物が提唱した教育法です。
モンテッソーリ教育の考え方は、「子どもたちは生まれながらにして、自発的に学び始める力を持っている」と捉えています。
また、モンテッソーリ教育は年齢を織り交ぜたクラス編成や、専用の教具を主軸とした環境が特徴的です。
そのため、あらかじめ決まったメソッド(方式)や環境の中で、集団生活が行われます。
ただし、モンテッソーリ教育に携わる教師は、直接教え込むことはせずに、環境を整えることに注力して、子どもが自ら成長する過程を大切にしています。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育の5つの違い
ここでは、レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育の違いを解説します。
各教育の主な違いは、以下の5つです。
- 子どもの捉え方の違い
- 主な活動の違い
- 教具や道具の違い
- 教師の違い
- 日本における普及率の違い
それぞれの違いを詳しく解説します。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育は、子どもを違った視点で捉えています。
レッジョ・エミリア教育は、子どもは既に可能性を持っていると捉え、子どもの主体性を軸とした活動を行います。
ここで注意するべき点は、将来的な可能性ではなく、子どもは既に潜在的な力を持っていることが前提です。
一方、モンテッソーリ教育は、自分を育てる力が備わっていると捉え、自己教育力を軸としています。
モンテッソーリ教育は、自ら成長する力を引き出すことに注力しているのに対し、レッジョ・エミリア教育は、自由な可能性を限りなく発揮することを重要視しています。
つまり、モンテッソーリ教育はインプットすること、レッジョ・エミリア教育は、アウトプットすることが前提なのです。
子どもの捉え方や前提が違うことによって、主な活動も異なります。
レッジョ・エミリア教育は、子どもの主体性を基にした「長期的なプロジェクト」が主な活動です。
プロジェクト保育は、1つのテーマを長期的に行う活動で、活動の内容やタイミングなどは全て子どもに決定権があります。
また、アートを通して自由な感性を刺激する保育内容も、レッジョ・エミリア教育の特徴的な活動の1つです。
一方、モンテッソーリ教育は、独自開発の教具を使った「お仕事」と呼ばれる活動を主軸としています。
お仕事とは、整えられた環境の中にある教具を子どもが選択し、ルールの中で最後までやり遂げる活動のことです。
お仕事をする中で、生活習慣を身につけたり、数・言語への理解を深めたりします。
2つの教育法を比較すると、「レッジョ・エミリア教育は、子どもの意思を軸にした自由な活動、モンテッソーリ教育は、教師によって整えられた環境の中で行う活動」と言った見解が立てられます。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育は、保育で使用する教具や道具も異なります。
レッジョ・エミリア教育は、決まった教具や道具はなく、自然を活用したりアートに関する道具を使ったりします。
一方、モンテッソーリ教育は、 発達段階に基づいて作られた独自性のある教具を使用することが前提の教育法です。
モンテッソーリ教育では、子どもが自発的に教具を使う中で、概念を発見・理解していくことが重要視されています。
概念を5つの領域「日常生活」「感覚」「言語」「数」「文化」と細分化し、決まった手順を踏む中で、五感を刺激する仕組みになっている点が特徴的です。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育は、クラスや子どもに関わる教師も異なります。
レッジョ・エミリア教育は、アート活動とプロジェクト保育を重視するため、各分野に応じた教師が保育に携わる点が大きな違いです。
各分野に長けている教師とは「アトリエリスタ(芸術専門官)」と「ペタゴジスタ(教育専門官)」と呼ばれる役職のことを指します。
芸術を専攻しているアトリエリスタは、アートや音楽活動などの創造的な活動を支援します。
教育学を専攻しているペタゴジスタは、いくつかの園を掛け持ちしていて、各園の保育士を定期的に支援することが役割です。
一方、モンテッソーリ教育は、専門の国際資格「ディプロマ」を有している教師が保育に携わります。
ディプロマとは、国際モンテッソーリ協会が定めた資格で、資格を得るための養成機関が大変厳しいことで有名です。
モンテッソーリ教育に精通したディプロマ有資格者が、保育やお仕事をサポートします。
日本における、レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育の普及率の違いも異なります。
レッジョ・エミリア教育は、アトリエリスタやペタゴジスタなどの概念が日本ではほとんど浸透しておらず、普及率は低い傾向にあります。
帰国子女や外国の子どもを受け入れる、インターナショナルスクールなどで取り入れられているようです。
ただ、幼児教育の管轄では、レッジョ・エミリア教育の考え方や手法が重要視されているため、プロジェクト保育やドキュメンテーションを取り入れる園も少なくはありません。
教育の世界情勢もレッジョ・エミリア教育を掲げていて、これから世界中で次第に普及していく教育法、と推測されます。
一方、モンテッソーリ教育は、レッジョ・エミリア教育に比べると普及率は高い傾向にあります。
その理由は、モンテッソーリ教育にゆかりのある土地や、ディプロマの養成機関があるからです。
ただ、ディプロマが園に常駐していなかったり、独自の教具を少しだけ取り入れたりと、徹底的に普及している園は少ないと言えます。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育は前提から違う
レッジョ・エミリア教育とは、子どもの主体性を軸にした教育理念を指します。
モンテッソーリ教育とは、子どもの自己教育力に着目し、整えられた環境や教具を重視する教育法です。
各教育は、前提や子どもの捉え方が違うため、携わる教師や手法も異なります。
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育の違いをまとめると、以下の通りです。
各教育の違い | レッジョ・エミリア教育 | モンテッソーリ教育 |
---|---|---|
子どもの捉え方 | 子どもは既に潜在的な力を持っている | 子どもは自己教育力を持っている |
主な活動 | 子どもが決めたテーマを集団で取り組む長期的なプロジェクト | 教具を使った活動(お仕事) |
教具や道具 | 自然やアート道具を活用 | 独自開発の教具を使用 |
教師 | 保育者アトリエリスタ(芸術専門官)ペタゴジスタ(教育専門官) | 保育者ディプロマ有資格者 |
日本における普及率 | 考え方や手法が徐々に浸透している | 比較的に普及している |
レッジョ・エミリア教育とモンテッソーリ教育は、どちらも歴史のある教育法です。
また、前提や手法は異なりますが、「子どもの未来のために考案された教育法」という点においてはどちらも変わりません。
違いや類似点を踏まえ、時代背景に応じた教育法を柔軟に取り入れることが大切です。