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最近よく聞く「非認知能力」って何?保育士が分かりやすく解説

保育士が解説!非認知能力ってなに?

近年、「非認知能力」という力が非常に話題になっていますね。幼児教育において育むべき重要な力として注目を浴びています。何だか大事そうだけどよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、非認知能力とはどんな力なのかを、分かりやすく解説します。是非参考にして頂けると嬉しいです。

非認知能力とは

人間の能力は、大きく分けると二つあります。認知能力と非認知能力です。

認知能力とは、読む、書く、計算するなど、いわゆる「学力」として評価されるものです。

一方、非認知能力とは、根気強さ、意欲、自信、社交性、思いやり等、「人間性」や「生きる力」と言われるものです。

非認知能力はこれからの時代に求められる力

AIやIoT等の急速な技術の進展により、現代は変化が激しく、予測が困難です。今後、この流れはますます加速していくと予想されています。

例えば、学校の試験で良い点数が取れることは、正しい知識・情報を多く持ち、その中から正解を見つける能力が高いことを意味します。いわゆる、学歴社会においては、こうした能力が高いことが評価されてきました。

ですが、ただ正解を見つける能力が高いだけでは、もはや時代の変化に追いつけないほどに、社会が急速に変化しています。

そんな社会を生き抜くために求められているのが「自分なりの答えを導き出す力」です。もちろん様々な知識を身につけ、様々な「正解」を知っていることは必要です。ですが、ただ知識を持っているだけではなく、それらを組み合わせたり、応用したりして試行錯誤しながら、「自分なりの答え」を導き出す力が重要です。

多様な視点で社会を見つめ、課題を発見し、様々な人々と協力しながら、その課題を解決しようと取り組む。そのために必要な力として注目されているのが、非認知能力です。

非認知能力の様々な定義

非認知能力には、様々な定義や分類が存在します。ここでは、代表的なものをご紹介します。

OECDによる非認知能力の定義

OECDの「社会情動的スキルに関する報告書」(2015年)では、非認知能力を3つの枠組みに分類して説明しています。

「目標の達成」「他者との協働」「情動の制御」の3つです。

  • 目標の達成」とは、忍耐力、自己制御、目標への情熱といった力です。
  • 他者との協働」とは、社交性、敬意、思いやり
  • 情動の制御」とは、自尊心、楽観性、自信などが当てはまります。

ビッグ・ファイブ

ある研究者が、「21世紀に特に重要なスキルをリストアップしたところ、160にも上った」そうです。それを5つに分類したのが、「ビッグ・ファイブ(Goldberg,L.1990,1992)」です。

  • 勤勉性(真面目さ、責任感の強さ
  • 開放性(好奇心の強さ、想像力の高さ、新しいものへの親和性
  • 外向性(社交性や活動性、積極性、コミニケーション能力
  • 協調性(利他性や共感性、仲間と協力して取り組む力
  • メンタルの強さ(不安や緊張への強さ、自分に対する自信

佐々木晃「0〜5歳児の非認知的能力 事例でわかる!社会情動的スキルを育む保育」(チャイルド本社、2020)

本書では、非認知能力を3つの要素でまとめています。「気付く力」「やり抜く力」「人間を理解し関係を調整する力」の3つです。

  • 「気付く力」とは、「好奇心」「驚嘆する心(感動)」「探求心」といった力です。
  • 「やりぬく力」とは、「課題の達成に向かう力(目標への情熱、忍耐)」のことで、その土台として、「自信・自尊心」「期待・楽観性」といった「情動をコントロールする力」が重要です。
  • 「人間を理解し関係を調整する力」として、「必要な時に人に助けを求める」「嫌なことを受け流したり、距離を置いて付き合ったりする」「自分と異なる行動や意見に対して考えるゆとりを持つ」「他者の行為や言葉に関心を持つ」といった力や、他者と交流したり、関係性をつくるために必要な力を挙げています。

文部科学省

厚労省・文科省・内閣府がそれぞれ告示している「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「認定こども園教育・保育要領」において、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が示されています。

  1. 健康な心と体
  2. 自立心
  3. 協同性
  4. 道徳性・規範意識の芽生え
  5. 社会生活との関わり
  6. 思考力の芽生え
  7. 数量や図形、文字、標識などへの関心・感覚
  8. 自然との関わり・生命尊重
  9. 言葉による伝え合い
  10. 豊かな感性と表現

そして、この「10の姿」のベースには、幼児期に育みたい資質・能力の「3つの柱」があります。

「知識及び技能の基礎」「思考力・判断力・表現力等の基礎」「学びに向かう力・人間性等」の3つです。これらは非認知能力と深く関係しています。

非認知能力を育むためには乳幼児期が重要

ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ジェームス・ヘックマン博士は、「ペリー就学前プロジェクト」や「アベセダリアン・プロジェクト」に参加した子どもの追跡調査を続け、幼児教育の重要性を指摘しています。

「ペリー就学前プロジェクト」とは、アメリカのミシガン州政府が 1962 年から 1967 年にかけて行なったもので、低所得のアフリカ系アメリカ人家庭の3~4歳の子どもを対象に、質の高い就学前教育を行いました。

「アベセダリアン・プロジェクト」は、1972年に同じくアメリカで実施されたもので、低所得のアフリカ系アメリカ人家庭の、平均生後4.4カ月の子どもを対象にした研究です。子どもたちを2つのグループに分け、一方には教育活動をせず、もう一方のグループには質の高い就学前教育を行いました。

ヘックマン博士は、これらの研究データを再分析した結果から「人生で成功するかどうかは、認知的スキルだけでは決まらない。非認知的な要素、すなわち肉体的・精神的健康や、根気強さ、注意深さ、意欲、自信といった社会的・情動的性質も欠かせない」と、幼児期の教育の効果を発表しました。

ヘックマン博士の研究成果により、非認知能力が認知能力の土台となることや、非認知能力は幼児期から小学校低学年に育成することが効果的であることが証明されています。

就学以降、学校での勉強に意欲的に取り組んだり、スポーツに打ち込んだり、好きなことを探究したり。将来どんな道に進むとしても、その土台として、非認知能力は非常に重要です。

非認知能力とは「生きる力」

子どもが将来、社会の一員として豊かな人生を歩むために、非認知能力はとても重要な力です。

非認知能力は、日常の中で、様々なことに主体的に挑戦したり、何かに熱中したり、思いっきり遊び込んだりする過程で、少しずつ育っていきます。

是非子どもに、「あなたのことが大好きだよ。何があっても味方だよ。」「失敗しても大丈夫だよ。困ったらいつでも助けるよ。」というメッセージを日々送ってあげてください。

そして、子どもが主体性を発揮しながら、挑戦したり、探究したりする姿を、あたたかく見守ってあげましょう。