乳幼児期のお子さまに経験してほしい遊びには、運動遊び、指先遊び、感触遊び、自然遊び等、様々なものが挙げられますね。お子さまにとっては、遊ぶことが学びです。遊びを通して様々な力が総合的に育っていきます。
今回は、なかでも、乳幼児期にとても重要な指先遊びについて、そのメリットと、年齢別おすすめの玩具・遊び方について解説します。是非参考にして頂けると幸いです。
手指の発達の流れ
0歳: 原始反射が消えると手が開き、手のひら全体で握ることができるようになります。腕全体を使って、ものを取り出したり、つかんだり、たたいたりするようになります。次第に、手に持ったものを別の手に持ち替えたり、親指と人差し指でものをつまむこともできるようになっていきます。
1歳:肩関節から指の関節までを組み合わせた動きが自在になり、手に持ったものを、目的に応じて動かす動作もできるようになります。小さいものでも、親指と人差し指でつかむことができるようになります。1歳半頃には積み木を重ねることができるようになり、徐々に道具も使い始めます。
2歳: 両手を同時に使ってものを扱うようになります。びんの蓋をねじって回す等、指先の細やかな操作ができるようになります。
指先遊びをするメリット
手は「突き出た大脳」と呼ばれ、手を使うことが脳の発達に関係すると言われています。指先遊びを通して、脳が刺激され、思考力、集中力、記憶力、言葉を操る力等、様々な発達が促されます。
小学校では、椅子に座り集中して勉強することが求められますが、そのためにはまず、乳幼児期に、安定した腰と体幹、なめらかに動く手指を獲得する必要があります。
乳児は、目で見たものに手を伸ばし、自分の体を使って触ったり、舐めたりし、物の感触や大きさを確かめ、自分の周りの環境を認識します。そして、自分の体を環境に合わせて調整することを学びます。指先遊びを通して、視覚、聴覚、触覚、固有受容覚といった感覚を統合し、自分の体・手指を思い通りに動かす術を身につけることができます。乳幼児期にこうした経験を積み重ねることが、就学以降も、集中して学習に取り組むための土台となります。
いざ鉛筆の持ち方やお箸の持ち方の練習を始めてみたものの、子どもの習得が思うように進まず、悩む親御さまも多いのではないかと思います。
一見、鉛筆の握り方や、お箸の持ち方というのは、その動きを繰り返し練習すれば、身につくように思えます。ですが実は、この練習を始める前に、どれだけ「土台」がしっかりとできているか、ということがとても重要です。鉛筆やお箸を使うためには、指先の細やかな動きを、自分の思い通りに操作する能力が必要です。まさに、乳幼児期の手指の発達における、集大成ともいえるでしょう。乳児期から、指先遊びを通して、しっかりと手指の発達を積み重ねていきましょう。
年齢別におすすめ 指先の発達を促す玩具・遊び
選び方のポイントは、子どもの手の発達に合った、シンプルで応答性の高いものを選ぶことです。この条件に合っているものを用意すると、子どもは飽きずに夢中になって遊ぶことができるでしょう。既製の玩具を買わずとも、ご自宅にあるものや、100均等で購入できるものを活用するのも良い手です。ただその際、小さなパーツ等を使用する場合は、誤飲には十分注意してください。
経験したい動き:にぎる、たたく、つまむ
援助のポイント:手にものを持つよう促しましょう。
おすすめ玩具:ガラガラ、タイコ、カップ、お手玉
経験したい動き:小さいものを指先でつまむ、はがす、積む
援助のポイント: いつも手が使える環境を整えましょう。
おすすめ玩具・遊び:チェーンリングを容器に出し入れする、ポットン落とし、マジックテープ、シール貼り、積み木
経験したい動き: 通す(ひも等)、小さな穴に入れる、道具を使う
援助のポイント: 指先を細かく使う玩具や道具を多く準備しましょう。
おすすめ玩具・遊び: ひも通し、チェーンリングを小さな穴に入れる、レンゲ等の道具を使ってすくう遊び、ボタンかけ、洗濯ばさみ遊び、容器の蓋をねじる
経験したい動き: 0〜2歳で身につけた様々な手指の動きを、自分の思い通りに、なめらかに操作する
援助のポイント: 子どもの姿をあたたかく見守りつつ、子どもが「難しい」「できない」等つまずきを抱えている場合は、「できた」という達成感を味わえるよう援助してあげましょう。
おすすめ玩具・遊び: ブロック、はさみを使った工作遊び、粘土、折り紙
指先の発達には、体幹や腰、腕の発達も欠かせない
発達には、それぞれ段階があり、順序があります。
もちろん個人差が大きく、一概には言えませんが、基本的に、人体の発達は中枢から末端へと進んでいきます。体幹・腰→肩→腕→手指というように。そのため、手指の発達を促すためには、単に指先を使う経験を積めばよいというだけではなく、それ以前の、腕や体幹といった、より粗大な部分の発達も不可欠です。
指先遊びだけでなく、体全身を使った遊びも、たっぷりと経験させてあげたいですね。
指先遊びで生きる力を育む
乳幼児期に、なめらかに動く手指を獲得することが、その後、あらゆる発達を促し、様々な力を身につけるための土台となります。就学以降、集中して学習に取り組むためにも、とても重要です。
分かりやすい目安として、年齢を示しましたが、お子さまの発達は非常に個人差が大きいです。
焦らず、ゆっくりとそれぞれの段階を積み重ねていくことが大切です。是非、お子さまが存分に指先遊びを楽しめる環境を、整えてあげてください。