モンテッソーリ教育とは、医師であり教育家であったマリア・モンテッソーリ博士が考案した、「子どもの自己教育力」に基づいた教育法です。
「自己教育力」という聞きなれない言葉は何か特別な難しさを感じてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。モンテッソーリ教育とは「子どもには自分で自分を教育する、育てる力がある」という考え方を元にした教育法です。
最近では、Googleの創業者セルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、アメリカ合衆国元大統領のバラク・オバマ氏、日本では将棋界の藤井聡太氏などがモンテッソーリ教育を受けたことでも注目を浴びています。
今回はそんなモンテッソーリ教育の視点から見たときの積み木遊びのメリットや留意したい点についてお伝えしたいと思います。親子で積み木遊びを楽しむ際のヒントになれば幸いです。
モンテッソーリ教育とは?
冒頭でもお伝えしましたが、「モンテッソーリ教育」とは、「子どもには自分で自分を育てる力がある」という考えがベースにあり、私たち大人は子どもの自発性と主体性を伸ばせるように学びや活動をサポートをしていきます。
モンテッソーリ教育では、子どもの成長時期を元に5つの分野【日常生活の練習・感覚教育・言語教育・算数教育・文化教育】に分かれています。
例えば、日常生活の練習をすることで、自分で出来ることが増え、日常生活の「自立」を通して自分自身の「自律」へと結びついていきます。また、動物や植物、日本地図や世界地図などの文化教育を通して自分自身の知識と世界を広げる事に繋がります。
遊びという名の「おしごと」を通して、多方面からの教育を身につけられるのがモンテッソーリ教育なのです。
モンテッソーリ教育の大きな特徴の一つに、子どもが主体の教育法であるという点が挙げられます。大人が口や手を出して、子どものリズムを崩さないことが大切です。しかし、頭では理解できても、なかなか実践するのは難しいことです。
私自身、ついつい先回りをしてあれこれと子どもの行動に手を差し出してしまいます。それは、子どもを手助けする気持ちからのときもあれば、恥ずかしながら「大人がやったほうが早い!」という、私の都合からそうしてしまうときも多くあります。
私たち大人にとって、子どものペースに合わせて「待つ」ということは簡単にできるものではないと思います。そこでまずは、ほんの少しだけでも「子どもには自分自身を育てる力が備わっている」ということを頭の片隅におきながら、子どもの行動を観察してみることから始めてみてはいかがでしょうか?。
「子どもが主体である」「子どものペースを大切にする」という考え方をふまえた上で、「今何をしようといていたのかな?」といった視点で子どもを観察してみると、今まで気が付かなかった姿に出会えるのではないかと思います。
モンテッソーリ教育では、子ども達が自発的に、また自分達のペースで活動に取り組む事が最も尊重されます。
周りの大人たちは、子ども達が活動に集中できるように、発達に見合った環境を整える事が大切だといわれています。
ここで言われる環境とは、物的環境と人的環境の両面です。人的環境とは、先ほどお伝えした「子どものリズムを崩さず見守る」という事にあたると思います。物的環境とは、おもちゃ等を子どもがわかりやすく見えやすい場所で保管する・子どもの年齢や発達にあった物を用意するといった事になります。おもちゃはいつも決まった場所へ直すように決めておく・写真やイラストなどでわかりやすくするといった工夫も、子どもが自分で遊びたいおもちゃを選びやすくなり、自分で片付けをする習慣が身につくことにも繋がっていきます。
モンテッソーリ教育の視点から見た、積み木遊びのメリット
モンテッソーリ教育では子どもが興味を持って関わり始めた活動が、その子の発達段階
にぴったり合った時、子どもはその活動を何度も繰り返します。この一生懸命に活動することを「集中現象」と呼び、子どもが発達する上で最も大切だといわれています。
一見、ただ遊んでいるだけに見える行動も、子ども達にとっては発達段階の大切な歩みになっているのです。遊びを通して、自分で考えて工夫することで、創造する力が養われていくのです。そこで、乳児期から幼児期、幼少期まで幅広く遊べるおもちゃの代表格になるのが「積み木」です。ここからは、モンテッソーリ教育の視点から見た積み木遊びのメリットについてお伝えしたいと思います。
乳児期の子どもはまだ指先が発達しておらず、何か物を掴む時にはまずは掌で物をわしづかみするような形で物を手にします。この掌全体で物を掴む事を繰り返していくうちにだんだんと手の筋肉が発達していき、少しずつ指先で物を掴めるようになってくるのです。
指先で物を掴めるようになってきた後は、指先をうまくコントロールして物を手放すことができるようになる、と段階を踏んで発達していきます。物を掴むという簡単な動作にも発達の段階があり、その発達を「遊び」を通して経験させてくれるのが積み木なのです。
積み木を積み上げていく動作は、子どもが指先のコントロールを習得するための練習になっているのです。
ただ「遊んでいる」という視点だけではなく、「積み木を掴む→積み木を手から離す→積み木を重ねる」と、こうした視点からも子どもを観察してみると、子どもの成長を再発見できるのではないかと思います。
モンテッソーリ教育では、3歳~6歳の間に視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感が最も発達する時期があり、この感覚の発達は知的活動の基礎となるため、とても重要視されています。
そして、「遊び」という大切な活動を通して、五感の中でも「視覚」を発達させることができるのが「積み木」です。
大小、形の異なる積み木を目にするだけでも、視覚を通してたくさんの情報を受けとっています。積み木での遊び方も、ただ触るだけ・並べる・上へ重ねる・造形を楽しむ、というように、子どもの年齢や発達段階によって変化していくのです。視覚の発達という視点からだけでも、積み木遊びを通して色んな成長を楽しめそうです。
また、モンテッソーリ教育の中では「ピンクタワー」や「円柱さし」といった教具があります。この二つは、「大小・高低・太細」の視覚を養う事ができるモンテッソーリ―教育の中でも一般的なものです。
高く積み上げるだけの単純な作業から、違う形を組み合わせて何かを創造、造形させていく、この成長過程を楽しめるのも、積み木遊びの醍醐味だと思っています。
そこで気をつけたいのが、「大人が口出ししない」という事です。例えば、積み木で家を作るとします。ついつい横から「次はこれ乗せてみたら?」と声を掛けたり、「屋根はこれ!」と三角の積み木を渡してしまう、そんな経験はございませんか?恥ずかしながら、どちらも昔の私です。
その子にとっては屋根は四角かもしれないし、屋根なんて考えてもいないかもしれません。ついつい「家の屋根といえば三角でしょ」と、私自身の価値観を子どもに押し付け、子供主体ではなく「私主体」の関わり方をしていました。遊びの上で正解なんて何もなく、子どもの思うがままに想像力を膨らませていく事が、個性を延ばす大きな成長の一歩になっていきます。
積み木は遊びながら学べる最高の知育玩具
まとめとして、積み木とは「積み上げる」だけではなく、遊びを通して指先や五感、創造性などたくさんの発達を成長させてくれます。
また、年齢によって遊び方が変化していく視点からみても、積み木一つで幅広い年代の子どもが楽しめる最高の知育玩具といえます。
「大人の主観を入れずにこどもを観察してみる」これが日常生活の中でモンテッソーリ教育を実践できる第一歩です。「子どもの主体性を大切に!」なんていつも思える事ではないと思います。ですが、少しでも余裕がある時に、子どもの姿を観察してみることで、何か新たな発見が見つかるかもしれません。モンテッソーリ教育の考えをヒントに、ぜひ日常に積み木遊びを取り入れて、親子で楽しんでくださいね。