「自己教育力」が前提となっているモンテッソーリ教育とは、いったいどんな教育方法なのでしょうか。モンテッソーリ教育の目的や特徴、5つの教育分野について簡単に、簡潔に解説していきます。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、医師で教育家のマリア・モンテッソーリ博士が考えた教育方法のことです。
マリアは障害児教育に取り組み、そこからヒントを得て、障害児に限定せず健常児にも教育を行いたいと考えていました。そして、1907年に貧困層向けのアパートに保育施設を作り、「子どもの家」と名付けて実践を積み重ねることでモンテッソーリ教育が生まれたのです。
モンテッソーリ教育の目的は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことです。つまり「自己教育力」を持つ子どもを育てるということです。
また、その力を発揮させるために、モンテッソーリは子どもを科学的に観察し、そこから得た事実に基づいて教具を開発するなど、独特の体系を持つ教育法を確立していきました。
大人がすべきことは、子どもに教えることではなく、子どもの発達を知って観察をし、環境を整えて行くことだと考えています。
モンテッソーリ教育の特徴
「自己教育力」を育てるモンテッソーリ教育の特徴を2つご紹介します。
子どもがそれぞれの発達によって必要な課題があり、それを具体的に表したのが「敏感期」です。
敏感期は9種類に分類ができます。
- 言語の敏感期……母国語を獲得する時期
- 運動の敏感期……生活に必要な運動能力を獲得する時期
- 秩序の敏感期……「いつもの」場所、物などにこだわりを持つ時期
- ちいさいものの敏感期……小さい物をみたときに喜ぶ時期
- 感覚の敏感期……五感が発達していく時期
- 書くことの敏感期……書くことが楽しい時期
- 読むことの敏感期……読むことが楽しい時期
- 数の敏感期……数字を読んだり書いたりすることが楽しい時期
- 文化、礼儀の敏感期……あいさつなどの社会性が発達していく時期
「敏感期」の時期の子どもは「何度も繰り返して行う」という特徴があります。大人から見るとただのいたずらに見えますが、子どもは「敏感期だから」何度も繰り返して行っているのです。
どのような種類の敏感期があるのかを知るだけで、子どもの困った行動が「自己教育力を育てている」ことに気づくことができるのです。
モンテッソーリ教育のもう一つの特徴が「環境の重要性」です。環境を構成する要素には「人的環境」と「物的環境」の2種類があります。
「物的環境」とは、子どもの敏感期に合う用具や、教具のことを指します。子どもの自己教育力を育てるために、サイズや色、形などが配慮されています。整えられた物的環境によって、子どもたちは自発的に学びながら、個々の発達課題をクリアしていくのです。
また、「人的環境」とは周りにいる大人のことを指します。モンテッソーリ教育では、子どもの発達を正しく理解し、発達課題に応じた教具を準備し、子どもに提示することが大人の役割とされています。そのためには、子どもをじっくりと観察し、何がいま必要なのかを見極める力が必要です。そして、子ども自身が「やってみたい」「できた」といった好循環を生むような関わり方が大切です。
モンテッソーリ教育5つの教育分野
モンテッソーリ教育における「自己教育力」をあげるための5つの教育分野についてご紹介します。
運動の完成が目的の「日常生活の練習」では、大人のまねをしながら自分の身体をコントロールする能力を身につけます。モンテッソーリ教育の特徴の一つとして「子どもはできないのではなく、やりかたを知らないのだ」という考えかたがあります。そのため、子どもにやり方を伝え、自分で自分のことができるように周りの大人は援助していきます。
具体的には、はさみを使う、コップに水を注ぐ、机を拭く、などがあります。
感覚が敏感な時期は、小さな音に気づいたり、わずかな匂いや味を区別することができます。そのため、「感覚の敏感期」に意識的に感覚器官を使って練習をします。モンテッソーリ教育では、感覚教育は「言語、算数、文化教育」という分野の基礎となる役割を持っています。
子どもは「言葉の敏感期」の時期に周りで話されている言葉を、母国語として認識します。言葉の発達段階にあわせ、語彙を増やしたり文字を書いたりできるようになります。子どもの興味にあわせて少しずつ言葉の獲得ができるような工夫がされています。
ある日突然、車のナンバーや時計の数字などに興味を示したことはありませんか?それは「数の敏感期」が現れ始めたからです。モンテッソーリ教育では、ただ単に数を数えることではなく、実際に具体物を扱いながら、数の概念を獲得していくための教具があります。こうした教具を用いることで、具体物から抽象の段階へスムーズに移行していくことができます。
「言葉」と「数」以外の分野は「文化教育」と呼ばれています。子どもの興味に応じて歴史や地理などのさまざまな分野を扱っています。
子どもの「自己教育力」は環境によって育まれる
子どもは毎日少しずつ成長をしていきます。その成長を促すためには「環境」が重要になってきます。教具や用具などの物的環境に加えて、子どもを観察し適切な時期に教具を提示できる、周りの大人の関わりが重要視されています。
環境を整えて、子どもの自己教育力を上げることで「できた」「もう一回」という意欲的な気持ちが育まれます。ぜひ子どもの姿を観察し、自己教育力を伸ばしていきましょう。