3歳になると、おしゃべりも上手になり、行動範囲もずいぶんと広くなります。
お友達や兄弟との関わりも増えてくる時期です。
このような時期には「どんな絵本を読んであげたらいいのかしら?」「どんな絵本に興味をもってくれるかしら?」と悩まれるかもしれません。
そんな時、まず思い浮かぶのは、ロングセラーの絵本ではないでしょうか?
世代を超えて読み継がれるロングセラー絵本。時代に関わらずお子さんの心をひきつける普遍的なテーマ、選び抜かれた言葉、心に残る温かい絵で構成されており、3歳のお子さんにもピッタリのものがたくさんあります。
今回はその中から10冊を選んで、おすすめポイントとともに紹介します。
3歳児の発達の特徴
- 助詞を使った文章で、お話しができる
- 自分の気持ちを言葉で表現できる
- 行動範囲が広がり、家庭内の日常生活だけではなく、お友達を始めとする外の世界との関わりにも関心を持つ
- 様々な経験を通して、自分の複雑な気持ちや他人と自分の気持の違いに気づく
- 「なぜ」「どうして」という言葉が増え、知的好奇心がでてくる
3歳児は、思考や心も大きく発達していく時期ですが、絵本を読むことでこのような発達をさらに促すことができます。ぜひ親子でお気に入りのロングセラー絵本を見つけてください。
3歳におすすめのロングセラー絵本
- 岸田 衿子/作
- 中谷 千代子/絵
- 発行:福音館書店(1966年)
日曜日の動物園。大きなかばと小さなかばの様子が、リズミカルなことばで描かれています。
途中、かばくんの視点からお話が進行し、かばくんから見た人間の子供たちの様子も描かれています。
お子さんは、お話の中で視点が入れ替わることに気づきます。そして、かばくんの言葉を聞いてよりいっそうかばくんに興味がわいてきます。
読み終えたら、ぜひ動物園に本物のかばさんに会いに行ってください。「なぜ」「どうして」という言葉が増え始める3歳児のお子さんは、疑問や好奇心でいっぱいです。本物のかばさんを見て、知的好奇心にこたえてあげましょう。
- 香山 美子/作
- 柿山 幸造/絵
- 発行:ひさかたチャイルド(1981年)
うさぎさんが作った「どうぞのいす」。ろばさんは、そのいすの上にたくさんのどんぐりを置いて、居眠りしてしまいます。目が覚めると、どんぐりがみんなくりになっていて、びっくり!実はどうぞのいすにやってきた動物たちが、次々に品物を取り換えっこしていたのです。
「どうぞのいす」に置かれた食べ物を見て、動物さんたちは「どうぞ」と書かれているのだからと食べてしまいますが、あとの人のことを考えて、自分の持っていたものを置いていきます。優しく温かみのある絵と相まって、とてもほのぼのとして心が温かくなる絵本です。
他の人のことを考えるという思いやりや優しい気持ちを育ててあげられます。
- ウクライナ民話
- エウゲーニー・M・ラチョフ/絵
- うちだ りさこ/訳
- 発行:福音館書店(1965年)
おじいさんが雪の積もった森で手袋を片方落としました。そこへ動物たちが次々やって来て、手袋の中で一緒に暮らし始めます。手袋の中は満員で今にもはじけそう。
最後におじいさんが手袋を拾いに来て、連れていた犬が吠えると・・・
動物たちがやって来るたびに、手袋の絵には窓がついたり、煙突ができたりと、暖かくて住み心地の良いお家のようになっていきます。絵はどちらかというと写実的なのですが、お話はとても空想的です。
3歳くらいになると、こんな空想的なお話もしっかり想像力を膨らませて楽しむことができます。
「こんな小さな手袋に大きな動物が入ったらどうなっちゃうんだろう?」と心配したり。「暖かそうで自分も一緒に住みたいな」と空想したり。「次のページではどうなるのかな?」とハラハラしながら先を予測したり。
お子さんの自由な発想や想像力を伸ばすことのできる絵本です。
- 加古 里子/作・絵
- 発行:福音館書店(1967年)
てんぐちゃんの持っているものを何でも欲しがるだるまちゃん。てんぐちゃんの持ち物とそっくりの物を、おとうさんのだるまどんと工夫して作ります。
「なるほど!」とうなずけるアイデアの数々に、お子さんたちも夢中になります。
「あの子と同じものがほしい!でも、これじゃない!」と駄々をこねてしまうことは、3歳頃にはよくあることですよね。でもこの絵本を読むと、ほしい物を手作りする方法があったと気づきます。工夫することや工夫することの楽しさを発見できる絵本です。登場人物たちのほのぼのとしたやり取りもお手本になりそうです。
- 石井 桃子/作
- 横内 襄/絵
- 発行:福音館書店(1967年)
小さなねこが家の外へ飛び出してしまいます。外には危険がいっぱい。小さな子供につかまえられそうになったり、車の前に飛び出したり、犬に追いかけられたり。ハラハラドキドキの展開が続きます。最後に子猫を助けてくれるのは・・・
小さなねこの冒険に、お子さんたちはハラハラしながら絵本を見つめます。
少しずつ外の世界に出て、小さな冒険をしているお子さんは、小さいねこに自分を重ねているのです。
「あぶない!」と叫んだり、「おうちに帰った方がいいよ」と声をかけたり。思いやりのある言葉がたくさん出てきて、3歳のお子さんの成長ぶりを実感できるかもしれませんね。
最後は母ねこが登場し、お家に帰ることができて、一安心。
お子さんは、パパやママのところが一番安心できる場所であることを改めて感じることでしょう。パパやママのお膝の上で読んでもらった温かな記憶と一緒に長く心に残る絵本です。
- なかがわ えりこ/作
- おおむら ゆりこ/絵
- 発行:福音館書店(1967年)
のねずみのぐりとぐらは、ある日大きな卵を見つけましたが、運べません。そこでその場でカステラを焼くことに。二人は協力して工夫し、素敵なカステラを焼き上げます。
いい匂いに誘われて森の動物たちが集まってきます。
「ぼくらのなまえはぐりとぐら このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること ぐりぐら ぐりぐら」のセリフで始まるお話です。このリズムの良い文をお子さんたちはあっという間に覚えてしまいます。
大きなフライパンから盛り上がったふっくらとおいしそうなカステラの絵。お子さんの想像力は刺激され、いい匂いまでイメージできるかもしれません。あんなおおきなカステラを一度は食べてみたいと、記憶に長く残ることでしょう。
二人が協力・工夫してカステラを作るところは本当に楽しそうで、お子さんもお料理のお手伝いがしたいと言い出すかもしれませんね。
最後に森の動物たちみんなで楽しくカステラを食べるシーンも、お子さんたちの憧れの場面です。
- エズラ・ジャック・キーツ/作・絵
- きじま はじめ/訳
- 発行:偕成社(1969年)
妹が生まれたピーターの成長物語です。
ピーターは、自分の物だった椅子やベッドが、赤ちゃんのためにどんどん色を塗り替えられていくのを見て複雑な気持ちです。まだ塗り替えられてない椅子を持って、家出を試みます。でも持ち出した椅子に座ってみると、小さすぎて座れません。自分が椅子に座れないほど大きくなっていることに気がついて、自分から、椅子をピンクに塗り替えようとお父さんに提案します。
弟や妹が生まれると、嬉しい反面、パパやママを取られたような気になり、複雑な気持ちになります。自分の気持ちを持て余して、突飛な行動にでたり、憎まれ口をたたいたりします。でもそんな葛藤を経て、自分を客観視したり、家族の愛情や、弟妹を可愛く思う気持ちに気づき、お兄さん、お姉さんへと成長するのです。
この絵本のピーターを見て、共感したり、どう対処すればいいか学んだりできるでしょう。お子さんの成長を優しく促せる絵本です。
- 片山 健/作・絵
- 発行:福音館書店(1991年)
内気で人見知りのコッコさんは、保育園でなかなかみんなの輪の中に入れません。そんなコッコさんがお友達を見つけて、けんかも経験して、最後はみんなと遊べるようになるまでが描かれています。
初めての登園では、緊張感いっぱいでお友達に声をかけられなかったり、みんなの輪の中に入っていけないお子さんはたくさんいます。
この絵本を読むと、コッコさんに感情移入して、共感するという経験ができるでしょう。なかなかお友達ができないのは自分だけではないのだなと気づいたり、どうやってお友達を作ったらいいのかがわかったり。コッコさんの喜びが自分のことのように嬉しく感じたり。そして少しずつ、勇気を出してお友達を作っていけるようになるでしょう。
- 西内 ミナミ/作
- 堀内 誠一/絵
- 発行:福音館書店(1966年)
一人ぼっちでどろんこだったぐるんぱは、仲間のぞうにきれいにしてもらって、はりきって働きに出かけます。ところが失敗ばかり。ビスケットもお皿も靴もピアノも車も、何を作っても大きすぎて雇い主さんから「もうけっこう」と言われてしまいます。
でもある日12人の子供を育てるお母さんに、子供たちの面倒を見ることを頼まれると・・・
3歳頃になると、お話の主人公に感情移入していろいろな気持ちを感じられるようになります。寂しい気持ちや、ちょっと悲しい気持ちも。
様々な気持ちを感じられる絵本を読んで、感受性を豊かに育てていきましょう。
あちこちから「もうけっこう」と言われてしまったぐるんぱですが、最後に自分に合った 仕事がみつかって、お子さんも自分のことのように喜びます。豊かな感受性と自己肯定感が得られます。
- 長谷川 摂子/作
- ふりや なな/画
- 発行:福音館書店(1990年)
ある日遊ぶ友達がいなかったかんたは、木の根っこから落ちてたどりついた不思議な世界で3人のおばけと遊びます。見かけはちょっと怖いけど、子供のようなおばけたち。たくさん遊んでおなかもいっぱいになるとおばけたちは眠ってしまいます。夜の月明りの下、心細くなったかんたが思わず「おかぁさーん」と叫ぶと、元の世界に戻ってくるというお話です。
おばけの名前や、呪文のようなセリフが独特で楽しくて、つい口ずさみたくなります。絵本の不思議な世界に入り込んで、お子さんもかんたと一緒に存分に楽しみます。
現実からファンタジーの世界へひとっ飛びするお話ですが、3歳のお子さんにはもうすっかりそれができる想像力が育ってきています。
この頃には桃太郎や浦島太郎のような昔話も楽しめます。想像力をさらに大きく伸ばしていきましょう。
絵本を通して世界を広げよう!
絵本を読んで味わった気持ちや経験は、お子さんの心を大きく、柔軟に育ててくれます。
お子さんの心は、まだ経験したことのない広い世界へとつながっていくことができるのです。
絵本は心の栄養です。栄養をたっぷり取って、広い世界へ踏み出しましょう。
ぜひ、親子でたくさんのロングセラー絵本に触れる時間を楽しんでください!