子どもの「自然離れ」が危惧されるようになって久しいですね。自然との触れ合いは何となく大切な気はするけど、なかなか難しいと感じている親御さんも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、自然遊びのメリットや、年齢別の楽しみ方等を分かりやすくご紹介します。是非参考にして頂けると嬉しいです。
自然遊びとは?
「子どもを自然に触れさせたいけど、身近に豊かな自然環境もないし…」という方も多いでしょう。しかし、「子どもを自然に触れさせたい」というその気持ちがあれば、ちょっと工夫するだけで、自然遊びは手軽に楽しむことができます。都会や住宅地等では、一見すると、自然が少なく感じます。
ですが、どんな場所にでも小さな命はたくましく生きているものです。
身近にある「自然」に目を向け、大人自身が楽しみながら、子どもと自然との豊かな出会いを広げていきましょう。
非認知能力を養う自然遊びの重要性
厚労省・文科省・内閣府がそれぞれ告示している「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「認定こども園教育・保育要領」において、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が示されています。
これは、小学校以降の学校教育で育んでいくことを目指している「生きる力(知識及び技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)」の土台となるものです。
この「10の姿」のうちの一つとして、「自然との関わり・生命尊重」が挙げられています。具体的には、以下のような姿です。
- 自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化等を感じ取る。
- 好奇心や探究心を持って考え、言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まる。
- 自然への愛情や畏敬の念を持つようになる。
- 身近な動植物に、心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気づく。
- 身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちを持って関わる。
これらは非認知能力といわれる力に繋がるものです。これからの時代を生き抜くために必要な「生きる力」を育むために、自然遊びはとても大切な経験です。
自然遊びのメリットとは?
非認知能力には、様々な定義がありますが、佐々木晃は著書「0〜5歳児の非認知的能力 事例でわかる!社会情動的スキルを育む保育」(チャイルド本社、2020)の中で、非認知能力を「気付く力」「やりぬく力」「人間を理解し関係を調整する力」の3つに整理しています。
そしてこのうち、あらゆる力の土台となる「気付く力」を育むためには、「好奇心を持って対象と関わり、感動・驚嘆し、探究する」というサイクルを繰り返すことが大切だと説明しています。
自然との触れ合いは、子どもにとって、「なぜだろう」「不思議だな」の連続です。心が動く瞬間がたくさんあります。まさに、「好奇心→感動→探究」のサイクルを繰り返すのにうってつけです。
そうして様々な発見を楽しんだり、自分なりに考えたり、探究する力、「生きる力」が身に付いていきます。
環境問題の深刻さについて、世界に先駆けて警鐘を鳴らした、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンは、著書「センス・オブ・ワンダー」にて、「もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに生涯消えることのない“センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性”を授けてほしいとたのむでしょう。」と述べています。
この「センス・オブ・ワンダー」を生涯持ち続けることは、豊かな人生を歩むためにとても大切だと思います。美しいものを美しいと感じる感性があると、日常の些細なことにも、心を動かし、幸せを感じることができるでしょう。それは、「生きる希望」や「豊かな人間性」に繋がるのではないでしょうか。
近年、SDGsという言葉をよく耳にしますね。
SDGsとは、2015年に国連で定められた、2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」のことです。環境破壊、貧困、人種差別など、今地球が直面している様々な問題を解決するために、全人類が共通で解決すべき課題を17のゴールにまとめたものです。環境を守り、人権を尊重しながら、経済成長していく。そうした「持続可能な社会」を人類皆で協力して作っていく必要があります。
そのために、これからの未来を担う子どもたちには、こうした様々な問題を、一人ひとりが自分ごととして考え、行動できる人材になることが求められています。自然遊びを通して、持続可能な社会の担い手としての、その芽を育んでいくことができるでしょう。
年齢別の自然遊びの楽しみ方を保育士が紹介
用意するもの:ペットボトル
遊び方:
①いろいろな草花のにおいを自由にかいでみる。
すべての草花は何らかのにおいを持っています。こすったりくしゃくしゃにしたりすると、においが強まるので、試してみてもいいですね。多様なにおいをかぐことで、様々な感覚が呼び覚まされます。
②可能であれば、気に入った草花を摘み取り、ペットボトルに入れる。
ペットボトルに草花の名前をラベリングするなどして、部屋に飾っておくと、繰り返しにおいを楽しむことができます。自然をより身近に感じ、様々な自然物に興味を持つきっかけに繋がると嬉しいです。
まずは大人がかいでみる姿を見せることで、子どもも安心して、興味を示すことができると思います。大人は、子どもと自然を繋ぎ、子どもが自分で自分の世界を広げていく(探究する)きっかけを作ることが大切です。
スーパー等で、シソの葉やハーブ等を購入して活用するのもおすすめです。
用意するもの:押し花を挟む本、調理用シート、ビニールのカードケース
遊び方:
① 好きな草花を摘む。
② 二つ折りの調理用シートに草花を挟んで、本のページの間に入れる。
③ できた押し花で遊ぶ。
押し花を一つ一つビニールのカードケースに入れておくと、遊びに活用しやすくなります。並べたり、観察したり、絵に描いてみたり、アイデア次第で様々な楽しみ方ができます。
可能であれば、日常的に押し花に触れられる環境を作ってあげましょう。
乾燥剤とともに、食品保存容器等にしまっておくと長持ちさせることができます。自然物が日常に溶け込むことで、子どもの想像力や探究心はより豊かに広がっていきます。
用意するもの: 身近な自然スタンプラリーカード
遊び方:
①カードを作る。
タテ・ヨコ4×4マス程のマス目を作り、それぞれの中に、身近にある自然を書き込みます。例えば、「木の実」「根っこ」「赤いもの」「ふわふわしたもの」「鳥の声」「虫」といった具合です。
②カードを持って戸外に出かける。
カードに書いているものを見つけることができたら印をつけていきます。スタンプラリーのようにしたり、ビンゴゲームのようにしても楽しいでしょう。
是非大人も一緒に探索を楽しんでください。様々な発見をしながら、心を動かしている子どもの姿をあたたかく受け止め、共感しましょう。
そして、「これは何だろうね」「どうしてこうなってるのかな」等、子どもが考えることを促す言葉掛けをしたり、「いい匂いだね」「ツルツルしてるね」等、子どもの体験していることを言語化したりすることが大切です。心が動く体験と言葉が出会うことで、子どもの世界はどんどん広がっていきます。
自然遊びで生きる力を育む
子どもが将来、生きる希望を持ち、豊かな人生を歩むことができるように、そして、持続可能な社会の担い手となれるように、自然との触れ合いはとても大切です。是非親子で自然遊びを楽しんでみてください。